Nikon Z9は、2021年末に登場したNikon Zシリーズのフラッグシップ機です。Nikon初のメカニカルシャッターレス設計を採用し、4571万画素フルサイズセンサーと強力なAF・連写性能を兼ね備えた、まさに「プロ仕様」の一台。実際に数週間使ってみて感じたのは「これ一台で何でも撮れる万能感」です。スポーツ・野鳥・報道などの動体撮影から、風景や商品撮影の超高解像まで、幅広いジャンルで圧倒的な安定感を発揮。さらに8K30pや4K120pといった動画性能も兼ね備えており、写真と映像の両方を最高レベルでカバーする“究極のハイブリッド機”に仕上がっています。
特徴と第一印象
Z9を手にしてまず感じたのは「Nikon一眼レフの伝統を継ぐ堅牢さと安心感」でした。ボディは約1.3kgと重量級ですが、その分グリップは深く、バッテリーグリップ一体型デザインで縦位置撮影も快適。メカシャッターを廃止した完全電子シャッターは当初不安もありましたが、実際に使ってみるとローリングシャッター歪みがほぼなく、無音撮影が可能な点は大きなアドバンテージ。AFはディープラーニングを活用した被写体検出AFが驚異的で、人・動物・車・飛行機など多様な被写体を的確に捉えます。ファインダーはブラックアウトフリーで、動体撮影時の視認性も抜群でした。
実際に使って良かった点

メカシャッターレス設計の安心感
Z9はNikon初の「完全電子シャッター専用機」です。当初はローリングシャッター歪みが心配されましたが、実際に使ってみるとまったく問題なく、高速被写体でも破綻がほぼ見られません。メカ部品がないためシャッター耐久の心配が不要で、長期使用に強いのも魅力です。また静音撮影が可能で、報道現場や動物撮影など「シャッター音が致命的になる場面」で非常に役立ちます。
ブラックアウトフリーEVF
従来のミラーレスや一眼レフでは連写時に一瞬のブラックアウトがあり、被写体を追い続けるのが難しいことがありました。Z9はEVFがブラックアウトフリーで、20コマ/秒の連写でも滑らかに被写体を追従できます。スポーツや野鳥撮影では大きなアドバンテージとなり、「撮影している安心感」が段違いです。
圧倒的なAF性能
Z9のAFは、ディープラーニングを用いた被写体認識が素晴らしく、人物・動物・鳥・車・飛行機まで自動的に判別。実際に使ってみても、犬が走るシーンや野鳥の飛翔でも迷わずピントが追従しました。人物撮影では瞳に確実に食いつき、ブレや外しが大幅に減少。Nikonの従来機から乗り換えると「AFの進化を最も強く感じられる部分」と言えます。
動画性能の高さ
8K30p内部記録に対応しているのはもちろん、4K120pのスローモーションも撮影可能。さらにProRes RAWやN-RAWなどプロ仕様の記録方式を選べるため、映画制作やCM撮影にも対応できる性能です。冷却性能も十分で、テスト的に8K動画を連続撮影しても停止せず、実用レベルで安心して使えました。
堅牢ボディとバッテリー性能
ボディはマグネシウム合金製で、防塵防滴性能も高く、雨天や砂埃のある現場でも問題なし。バッテリーは大容量のEN-EL18dを採用し、静止画では一日中撮り続けても余裕があるレベル。縦位置グリップ一体型のデザインで、縦構図撮影も非常に快適です。プロの現場に必要な「信頼性」を徹底的に考えた仕様といえます。
実際に使って気になった点

重量とサイズの大きさ
Z9は約1340gと、他社のフラッグシップミラーレスに比べてもずっしりと重い部類に入ります。旅行や日常スナップに持ち出すには正直ハードルが高く、三脚や一脚を使う撮影が前提になりがちです。持ち運びの負担を考えると「軽量モデルをサブに」という構成が現実的になります。
高額な価格設定
実売価格は約70万円前後(2025年時点)と非常に高額。性能に見合っているのは確かですが、趣味用途で導入するには難しく、プロや本格派のアマチュアでないと投資判断が難しい価格帯です。特にZ8が登場している現在では「コスパ重視ならZ8」という選択肢が増えています。
データ処理の負担
4571万画素センサー+最大20コマ/秒の連写は、膨大なRAWデータを生み出します。連写を多用するとPCへの取り込みや現像に時間がかかり、ストレージも圧迫されがちです。高性能PCと大容量SSDは必須で、機材環境にコストが追加でかかる点は無視できません。
発熱の可能性
長時間の8K動画収録では、特に夏場の屋外などで発熱制御が働くことがあります。冷却ファンを持たない構造上、FX3など動画特化機に比べると熱対策の面で劣る部分もあり、動画を主軸にするユーザーは注意が必要です。
初心者にはオーバースペック
Z9はあまりに性能が高く、カメラを始めたばかりの人が使うと「持て余す」可能性があります。複雑なメニューや高度な機能が多いため、初心者には操作の学習コストが大きく、結果的に宝の持ち腐れになってしまうケースも考えられます。
スペック表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 2021年12月 |
| センサー | フルサイズ CMOS 裏面照射型 |
| 有効画素数 | 約4571万画素 |
| 連写性能 | 約20コマ/秒(RAW)、120コマ/秒(JPEG) |
| 動画性能 | 8K30p / 4K120p |
| シャッター | 完全電子シャッター |
| 重量 | 約1340g(バッテリー含む) |
| 価格 | 約70万円前後(2025年時点) |
Z9のスペックを見れば、静止画と動画の両方を極めたフラッグシップ機であることが分かります。メカシャッターレス設計や8K対応など、他機にはない独自性を備えており、プロの現場で安心して使える仕様です。
他機種との比較
| モデル | 画素数 | 重量 | 動画性能 | 特徴 | 価格目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| Nikon Z9 | 4571万画素 | 1340g | 8K30p / 4K120p | 完全電子シャッター採用の最上位機 | 約70万円 |
| Nikon Z8 | 4571万画素 | 910g | 8K30p / 4K120p | Z9譲りの性能を軽量化 | 約55万円 |
| Sony α1 | 5010万画素 | 737g | 8K30p / 4K120p | ソニーのフラッグシップ | 約90万円 |
| Canon EOS R3 | 2410万画素 | 1015g | 6K60p / 4K120p | 動体撮影特化モデル | 約70万円 |
比較表を見ると、Z9は重量や価格は大きいものの、その分性能は突出しています。Z8は軽量化を重視、ソニーやキヤノンのフラッグシップも魅力ですが、総合力ではZ9が群を抜いており、万能型の頂点に立つ存在です。
購入者の口コミ
| 良い口コミ | 悪い口コミ |
|---|---|
| AFが驚異的で動体撮影の成功率が格段に上がった | 重量が重く長時間の持ち歩きは大変 |
| 8K動画が内部収録でき映像制作でも活躍 | RAWデータが重くPC負荷が大きい |
| メカシャッターレスで静音撮影ができるのが便利 | 価格が高く趣味用途では手が出しづらい |
口コミでは「AF精度」「動画性能」「信頼性」が特に評価され、プロやハイアマチュアから高い支持を得ています。一方で重量や価格については不満の声もあります。購入を検討する際には、自分の用途や予算とのバランスが重要です。
総評|このカメラはこんな人におすすめ
Nikon Z9は「全方位に死角のないフラッグシップ」と言えるカメラです。動体・風景・商品・映像制作と、どんな現場でも最高水準のパフォーマンスを発揮。プロカメラマンや本格的なクリエイターには最適な一台ですが、その重量や価格からライトユーザーには不向きです。高い投資価値があり、長期間安心して使える究極のカメラを探している方におすすめします。
まとめ
Nikon Z9はNikonが長年培った技術を結集したフラッグシップ機であり、静止画・動画どちらにおいても業界トップクラスの性能を誇ります。価格や重量といったハードルはありますが、それ以上に得られる信頼性と表現力は比類のないものです。購入を検討する際は「仕事として使うか」「どの程度の環境で活用するか」を明確にして選ぶと、長く満足できる一台となるでしょう。




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