カスピ海のほとりに位置するアゼルバイジャン。ヨーロッパなのかアジアなのかも曖昧で、「あまり知らない国」の代表格と言えるかもしれません。ですが実際は、世界遺産の塔や燃える地面、国技に近いチェス文化、さらには美食や音楽など、面白いネタがぎっしり詰まった国です。この記事では、そんなアゼルバイジャンの魅力を雑学スタイルで15個まとめてご紹介します。
この記事でわかること
アゼルバイジャンが“火の国”と呼ばれる理由
首都バクーの地理的ユニークさ
世界遺産や世界初の油田などの歴史資産
独特な建築やスポーツ、音楽文化
親日的な国民性と日本との関係
1. 「火の国」と呼ばれる理由

アゼルバイジャンの別名は“火の国”。これは天然ガスが地表から自然に漏れ出し、時には自然発火するという現象が古くから見られたためです。火が地面から燃え続ける「ヤナル・ダー(燃える山)」や、ゾロアスター教の聖地「アテシュギャーフ」など、宗教と結びついた火の文化が根付いています。
火は単なる自然現象にとどまらず、アゼルバイジャン人にとってアイデンティティの象徴であり、国旗のデザインや建築物にも反映されています。
おまけ雑学
国の観光スローガンは「Land of Fire(火の国)」として国際的に使われています。
2. 首都バクーは“海より低い”都市

アゼルバイジャンの首都バクーは、カスピ海に面した港町ですが、実は海面下約28メートルという、世界で最も低い標高にある首都です。この“沈んだ都市”とも言えるバクーは、風の強さでも有名で、「風の街(City of Winds)」という別名もあります。
地理的に非常に珍しい立地でありながら、現代建築や経済開発が進み、今では近未来都市としても世界から注目されています。
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風が強すぎて、市内の看板や装飾は風対策の設計が標準化されています。
3. ヨーロッパとアジアのはざまで生きる国

アゼルバイジャンは、地理的にはコーカサス地方に属し、ヨーロッパとアジアの境界上にあります。そのため文化的にも東西が融合しており、イスラムの伝統、ロシア・ソ連の影響、そして近代ヨーロッパの感性が入り混じったユニークな雰囲気があります。
服装も西洋的ながら食文化はトルコ風、宗教はイスラム教中心だが比較的世俗的。まさに“ミックスされた国家”です。
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ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)にも加盟しており、スポーツの分野では「ヨーロッパ側」として活動しています。
4. 石油が国を変えた

19世紀後半、アゼルバイジャンの首都バクーは“世界最大の産油地”として急成長を遂げました。ロスチャイルド家やノーベル家など、世界的な資産家がこの地に投資し、油田開発に乗り出したのです。特にノーベル兄弟が得た富は、後にノーベル賞の資金源にもなったと言われています。
この石油産業がもたらしたインフラと財力が、アゼルバイジャン近代化の礎となりました。
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ノーベル家が住んでいたバクーの邸宅は現在、博物館として公開されています。
5. 世界遺産の「乙女の塔」

バクー旧市街にそびえる「マイデン・タワー(乙女の塔)」は、古代の火崇拝や天文観測所との関わりがあるとされ、バクー市内で最も象徴的な建物の一つです。独特の形状と用途不明の構造は多くの謎を残しており、観光名所としても大人気です。
旧市街全体が世界遺産に登録されており、石造りの迷路のような街並みは、現代の高層ビルとの対比が印象的です。
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アゼルバイジャンの10マナト紙幣には、この塔のイラストが描かれています。
6. カスピ海は“海”じゃない?

カスピ海といえば「海」という名前がついていますが、実はこれは“海”ではなく、四方を陸に囲まれた「湖」です。塩分濃度も低く、世界最大の湖として分類されています。
アゼルバイジャンではこのカスピ海を通じてロシア、イラン、中央アジアと経済的・軍事的にも結びついており、重要な海上交通路でもあります。
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カスピ海ではチョウザメの漁も盛んで、高級食材キャビアの産地としても有名です。
7. 世界初の機械式油田が誕生

1870年代、アゼルバイジャンは世界で初めて機械を使った本格的な油田開発を行った国です。それまでは手掘りでの採掘が主流でしたが、ここでの発展により「近代石油産業の始まり」と評価されています。
この功績により、アゼルバイジャンは“石油文明の起点”とも言える存在となりました。
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この時代の油田の様子は、アゼルバイジャン国立歴史博物館で当時の写真や資料として展示されています。
8. フレイム・タワーズが象徴する近未来都市

バクーの街を象徴する建築物といえば「フレイム・タワーズ」。3つのビルが炎の形を模して立ち並び、夜になると全面にLEDが灯り、本当に燃えているように見えるのが特徴です。
この近未来的な建築群は、「火の国」のアイデンティティと現代技術の融合として、世界の建築ファンからも注目を集めています。
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LEDには国旗や文字を流す機能もあり、祝日やイベントに合わせてカラフルに演出されます。
9. チェスは“国技級”の人気

アゼルバイジャンではチェスが非常に盛んで、学校教育にも取り入れられています。国際大会での成績も優秀で、多くのグランドマスター(名人級棋士)を輩出しています。
テレビでチェスの解説番組が放送されるほど、国民的な人気を誇る競技です。
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街中の公園では、巨大チェス盤を囲んで老若男女が対戦する姿も見られます。
10. 世界に誇る音楽「ムガーム」

ムガームはアゼルバイジャン伝統の音楽スタイルで、即興演奏と深い感情表現が特徴です。詩の朗読と器楽の融合であり、心に訴える音楽として古くから親しまれてきました。
2008年にはユネスコの無形文化遺産にも登録され、国際的にもその価値が認められています。
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バクーには「ムガーム・センター」という専門の音楽施設があり、定期的に演奏会が行われています。
11. 朝食はハーブとパクチーが主役

アゼルバイジャンの朝食は、日本や欧米のそれとは一味違います。野菜やチーズ、卵、ジャム、ナッツなどがプレートにずらりと並びますが、特に特徴的なのが新鮮なハーブ類の存在。パクチー、ディル、ミントなどの香り高い葉野菜がたっぷり添えられ、紅茶とともにいただくのが一般的です。
パンは「チュレク」と呼ばれる柔らかい丸パンで、バターやハチミツをつけて食べたり、チーズやハーブを巻いて食べたりします。朝から胃に優しく、しかも香りで目が覚めるような一皿が、家庭でもホテルでも提供されます。
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アゼルバイジャンでは紅茶をグラスで提供するのが一般的で、角砂糖を口に含みながら紅茶をすするのが伝統的な飲み方です。
12. プラウが主役の食卓

アゼルバイジャンの代表的な料理といえば「プラウ(ピラフ)」。炊き上げたバターライスの上に、スパイスで煮込んだ肉や魚、ナッツ、ドライフルーツなどを豪快に盛りつけたもので、家庭ごとにバリエーションが異なります。
プラウはお祝い事や来客時などにも振る舞われ、見た目も香りも贅沢。米と油と肉、そこにハーブやヨーグルトなどが加わり、シンプルながら奥深い味わいです。米文化が根付くアジア圏の人々にも、どこか親しみやすさを感じさせる一皿です。
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アゼルバイジャンの食卓には、必ずと言っていいほどパンが出されますが、「料理を残してもパンは残すな」と教えられるほどパンを神聖視する文化があります。
13. 春を花と焚き火で祝う「ノウルーズ」

ノウルーズは3月20日前後に祝われる春の訪れと新年を祝う祝祭です。ゾロアスター教由来の伝統行事であり、アゼルバイジャンをはじめ中央アジア・中東諸国でも祝われています。
ノウルーズでは街や家々が花で飾られ、特に「焚き火を飛び越える」儀式が象徴的。この火を超えることで過去の厄を清め、新しい年に希望を託す意味が込められています。
食卓には「セブゼ」という麦芽の芽やナッツ、卵など縁起物が並び、音楽と踊りで盛り上がる華やかな祝日です。
おまけ雑学
ノウルーズは国連にも「国際ノウルーズの日」として登録されており、アゼルバイジャンでは5連休以上の大型祝日になります。
14. アゼルバイジャン語は“トルコ語の親戚”

アゼルバイジャン語はテュルク語族に属し、トルコ語とは非常に近い関係にあります。日常会話レベルであれば、トルコ人とアゼルバイジャン人はお互いの言語でなんとなく意思疎通ができてしまうほど。
表記はラテン文字を使用しており、発音も比較的明瞭。教育では英語やロシア語も学ばれており、若者の多くはトリリンガル化が進んでいます。
おまけ雑学
アゼルバイジャン語の「こんにちは」は「サラーム」、トルコ語とまったく同じ。共通点の多さに驚かされます。
15. 日本との意外な関係と親日感情

アゼルバイジャンと日本は距離は遠くても、じつは深い関係があります。特にエネルギー分野では協力が進み、日本企業が石油・ガス関連のプロジェクトに多数参加しています。
また、アゼルバイジャンでは日本文化への関心が高く、日本語学習者や日本のアニメ・漫画のファンも多いです。地元の大学には日本語講座があり、友好的な感情を抱く人も少なくありません。
おまけ雑学:
バクーには「日本=礼儀正しく信頼できる国」というイメージが強く、街で「日本人?」と声をかけられることもあるほどです。
まとめ:アゼルバイジャンは“語れる国”。ひと味違う魅力がいっぱい!

アゼルバイジャンは、単なる産油国でも中東の一国でもありません。火と石油の神秘、歴史と未来の融合、音楽と料理の豊かさ、人々の親しみやすさ。そのすべてが絶妙に組み合わさった“語りたくなる国”です。
この記事で紹介した15の雑学を知るだけでも、あなたの世界地図はきっと少し広がります。旅好きな方、文化に興味のある方、ぜひアゼルバイジャンという選択肢を頭の片隅に入れてみてください。


